FC2ブログ

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

始まりはブコウスキーの文章だった奴から観た映画『バーフライ』

2010年08月11日 21:19

 こんつは、ハンキー・ドリー・ハンクです。
あー、前回の記事で「チャールズ・ブコウスキー原作の映画が観たい」と書きました。
まあ、彼の短編をいくつか混ぜたもんはありますが、どれもクソ。
てか、彼が敬愛していたヘンリー・ミラーやルイ・フェルディナン・セリーヌと同じく、映像化が不可能なもんなんじゃないかと思います。
で、1970年代に、うっかり「映画?ええよ」とサインして「この、くそったれが!」と経験してから、「絶対に映画の話には乗らないぞ!」と決めたブコウスキー。
そんな彼が、「コイツ(監督)は本気だ。...わかった、脚本も書く」と生まれたのが『バーフライ』。

 この作品、ライトなブコウスキー・ファンやミッキー・ロークのマニアじゃねーとつまんねーです。
僕が最初にVHSで観たときは「安っぽいのはいいんだけど、すげー大事なもんが欠けてるぞと駄作だと思いました。
で、その後に段取りから撮影、試写会までの裏話を小説にした『パンク、ハリウッドを行く』が翻訳され、駄作から迷作になりました。

 チャールズ・ブコウスキーに興味を抱いた監督のバーベット・シュローダーは、ブコウスキーにアプローチします。しかし取り合わない。
「猥褻で荒唐無稽な小説、詩を書くアングラ界の変態オヤジ」っつーイメージだけ一人歩きし、インタビューの類もイメージ先行で編集された経験もあり、特に嫌な思いをした映画界の人間とは会いたくないわけです。
が、何年も熱意が衰えないシュローダーのこだわりを粋に感じたブコウスキーは会うことを決めます。
で、見せられたシュローダー作品は、ウガンダの、人食いアミンと呼ばれたイディ・アミンの独裁政権下を撮影したもんでした。
滑稽なことを命令されればなんでもやる兵士や、それを撮影許可までこぎつけたシュローダーの捨て身な姿勢に「コイツは...」と思い、『バーフライ』の制作を了承し、自身が脚本を書くことにも応じました。
(Wikipediaでは、シュローダーが監督に「抜擢された」と記されているが、発案当初から彼が監督であることが前提だった。)
barfly05.jpg

 制作にとりかかるまでの舞台裏は『パンク、ハリウッドを行く』を読んでいただくとしてですね、制作開始時に色々揉めたよーです。
当初、熱烈なファンであるショーン・ペンがノー・ギャラで「俺にブコウスキー役をやらせてくれ!」と名乗り出るも、先日亡くなったデニス・ホッパーとバーベット・シュローダーの間に確執があり実現せず。結局、ミッキー・ロークが主役に決まりました。
が、1980年代のミッキー・ロークっつーと、当時のハリウッド優男俳優のトップ・クラスの一人です。
barfly01.jpg

...。こんなんブコウスキーじゃねー!と僕ぁ思いました。
落魄し、『レスラー』で徹底的な役作りをしたミッキー・ロークじゃなく、「出れば女が喜ぶ」状態で有頂天な存在だったためか、役作りも肥えて小汚い格好で辛気くさい仕草をすることを心がけたと思われますが、キザっぽさが鼻につくっつー。
このブコウスキー像について、元恋人の一人は語ります。

「まるで、(ハンフリー)ボガードが女を口説くみたい。彼は気取った雰囲気もなく、汚らしかった。そして、ちょっと壊れた女が好きだったのよ」

分厚すぎて、酒飲んで該当箇所を見つけるのが困難ですが、記憶が正しければ、このドキュメンタリー『オールド・パンク』にて発言をした元恋人は交際当時レコード会社の重役だったはずです。

 制作を断念せざるを得ない状況で、なんとかキャスティングまでこぎ着けたため、もう後には引けねーです。
barfly04.jpg

予算も少なく、撮影期間も限られていたため、バーベット・シュローダーと、ヒロインであるフェイ・ダナウェイはリハーサルを熱望しました。
が、売れっ子のミッキー・ロークはリハーサル不要と。(現在、売れっ子だった頃を振り返り、本人は「バカな奴だった」と語っている。)
フェイ・ダナウェイがリハーサルを熱望したのは、チャールズ・ブコウスキーによれば「ヒロインとしては久方ぶりであり、ある意味彼女のカムバック作でもあった」と。
確かに、映画を殆ど観ねー僕ぁ、フェイ・ダナウェイっつーと『チャイナタウン』すから。『バーフライ』より一回り昔の作品です。そら気合い入るわな、と。

 脚本も、一人っきりにならねーと文章が書けねーチャールズ・ブコウスキーにとって苦痛だったようで、執筆期間中は自宅からカミさんや監督を閉め出して完成させたそーです。
おかげさまで、娘と同じくれーの年齢で美人だったカミさんとバーベット・シュローダーが不倫してんじゃねーかと疑心暗鬼に陥り、シュローダーは「ハンクは俺をリンダ(妻)とデキてるんじゃないかと勘ぐって殺そうと思った時期もあったようだ」みてーに語っております。実際、脅迫電話が結構かかってきたよーですが。
で、この脚本、詩作にふけり、バーにたむろする金持ちの使いっ走りをしてた頃や、僕が秀逸な一言だと思っとる「私はたった一度だけ恋をしたことがある」っつー恋人との出会いと破天荒な日々が綴られております。(映画中ではワンダ、小説ではジェーンという名で登場する。)

 チャールズ・ブコウスキーっつー人は、父親に虐待を受けつつ、密かな楽しみとして文章を読むことと書くことに目覚め、青年時代は純文学、壮年期に入り口語体を主体とした短編小説へ移行、最愛の恋人を失ったことで詩作に目覚めたっつー珍しいしとです。
で、大器晩成ゆえに同じ体験を別の角度から綴ったものが多く、『バーフライ』は実際、酒や食い物を万引きして恋人と逃げて隠れた場所がロケに使われたり、その恋人と出会ったときのエピソード等々、陽の面で書かれております。
が、陰の面で描かれた『バーフライ』におけるエピソードの数々は痛ましいです。
彼は無類の呑み助で競馬狂っつーイメージがありますが、これは恋人の影響大です。

 最愛の恋人ワンダもといジェーンと知り合った当初、素寒貧だったチャールズ・ブコウスキーは、彼女が愛人の名前を使ってツケで酒や食い物を買って貰います。
愛人はその行動に激怒しますが、彼女に三行半を突きつけられ正式にブコウスキーと同棲することになります。
で、愛人の金があてにできなくなった二人は酒を飲むために色々やったみてーです。
んで、現存する写真を見ると「こんなに美人だったんかい!」と思う恋人ですが、ブコウスキーと同棲した頃は三十代後半でブコウスキーより二世代くれー年上だったよーです。
んでもって、これが飲む飲む。完全なアル中だったっつー。
それにつきあって飲んだ結果、ブコウスキーはおそらく極度の胃潰瘍と思われる疾患に見舞われ、吐血して死にかけます。(短編『慈善病院での生き死に』に詳しい。)
なんとか生き残るも、彼女の酒量が減らない。
一日中、酒で酩酊してりゃ諍いは絶えないわけで、二人は別れます。
競馬の興奮を教わり、単なる肉体関係じゃなく恋愛っつーもんを教えてくれた恋人と。

 よくですね、女々しいっつー言葉を耳にしますが、ありゃ男のためのもんですよ。

酒で暴れたりする恋人を殴ったり、罵りあったりしても、心配で仕方ねー彼は彼女を訪ねます。
ほいだら、全然酒量も生活習慣も変わってねーっつー。
「このままだと死ぬぞ!」と酒を取り上げるも結局、入院する羽目に。
んで、ちょくちょく見舞いに行くも意識不明な状態が続き、ホントかどーか定かじゃねーですが、亡くなる日に意識を取り戻し「やっぱり。アンタだと思ったわ」と言い、また昏睡状態に陥り息を引き取ります。

 亡くなった恋人は若くして結婚、離婚、子供もおり、喪主を彼女の息子に頼むも薄情な態度っつー。
結局、小説やコラム等で「その日暮らし」と書きつつ、亡くなった父親の貯金やらを蓄えていた金で彼女の葬儀代を立て替えます。最終的に息子はチャールズ・ブコウスキーに支払わなかったそうですが。
この死を境に、今まで短編小説ばかりで、どこに持ち込んでも採用されなかったのに、急に詩作に目覚めます。なので、『バーフライ』の前半で詩を書いてるシーンは事実と時系列が異なります。ま、フィクションですから、どーでもええですが。
これが本国アメリカよりヨーロッパ諸国で評価されるよーになるとは想像もしなかったでしょー。
よくね、僕の親父どんは「人生ってのは、下駄履くまでわからねえ」と言いますが、卑屈になることがありつつ、諦めかけていた頃に才能が開花するっつー希有な例ですな。

 話を映画『バーフライ』に戻します。
この作品、実はチャールズ・ブコウスキー本人がカメオ出演しとります。
barfly02.jpg

で、なんでもここで口に含んだビールを放尿するよーに瓶に戻すっつーことをしたそーで、それは筋金入りの呑み助にしかできない技だと。でも、試写会で観たら写ってなかったと少々残念そーなことを書いております。
更に、このシーンでブコウスキーの分身ヘンリーがワンダに声をかけるんですが、ブコウスキーは怒り心頭です。
ミッキー・ロークのキザな演技にじゃねーです。

ビールを残してるからです。

barfly03.jpg

アホみてーでしょ?でもね、酒飲みっつーのは、注がれた酒は空にしなきゃ気が済まねーんですよ。
それを、四分の一は残ったビールを横に追いやり、スコッチかなんかのロックに手をつけることに憤慨と。
え?いいじゃない、ビールのそんくらい、ですと?

馬鹿野郎!

泥酔して寝て起床したら、飲みかけのビールがテーブルの上にあるときの悔しさがわかるのか!

ちょっと待て、もう一本、蓋を開けてから続き書くからな。

プシッ!

僕ぁね、ミッキー・ロークの臭い演技より、その点に憤慨したブコウスキーを評価してーですね。

 なんだかんだで完成し、キャスティングから少しは話題になったらしい『バーフライ』ですが、冒頭のとーりな作品です。名作じゃねーです。迷作です。
で、失敗を話のネタにするわけで、この「クソの巣窟だな」みてーに思ったチャールズ・ブコウスキーは、『パンク、ハリウッドを行く』を執筆した次第です。
一応、作品中では、死にものぐるいで資金集めやら、ゲットーに仮住まいし殺されかけながら色々奔走してくれたバーベット・シュローダーに気を遣ってか、ミッキー・ロークと対面した際のエピソードやプレミアでの鑑賞感想は結構控えめです。
ただ、この長編小説を書くきっかけが「細かく演出に口出しをする。口出ししている自分が何をしているかも理解していないくせに。そんなことばかりしているから、ろくな作品ができないんだよ、ハリウッドは」っつー映画界と無縁な視点からで、鋭いな、と。
実際、十年くれー、リメイクだハリウッド版○○だと迷走してますからね。


雑感:ハリウッドの舞台裏を描いた『パンク、ハリウッドを行く』に登場する映画人は数多く、翻訳者が脚注で「○○のことと思われる」と記しているが、何名かが誰を指しているのか不明な点がある。映画ファンはそれが誰を指しているか当てる楽しみもある。
また、『バーフライ』の脚本が陽とすれば、『オールド・パンク哄笑する』に収録されている中編「ぐうたら人生」は陰にあたる。
英語→日本語→英語と脳内翻訳して読む俺は原文を読んでも理解できないだろうが、原文は時代毎に変わるスラングの意味合いと巧妙に用いた手法等があり、それが高く評価されているようだ。七十歳にしてPCだけではなく、市井の言葉を巧みに使いこなす等、老いてますます盛んな一面がうかがえる。
関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)



    QLOOKアクセス解析
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。