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スカム・フィクション4~キャンディ~

2010年07月23日 13:02

【ホントに「これでヌケるか?」という依頼があった。】

 煩苦は思う。
何故、いくつもの雫は暑苦しく、一滴の雫が波を起こすことが涼しげであることを。
絞ったウエスの、最後の一滴が楽しみであった。

 裏の畑で育てたキュウリもじきに冷えるであろう。
煩苦は縁側に腰掛け、沈んでいく紅を眺めながら酒をあおることが日々の愉しみであった。

「ごめんくださいまし」

ぎょっとした。
日も暮れるこの時間に来客。ましてや名も無き翁の家に。
やや顔をしかめ、軒先へ出るとそれはそれは育ちの良さそうな、このような辺鄙な土地では目にすることができない麗らかな娘が立っておりました。

「一騎当千の珍豪、濃苦川煩苦(こくがわはんく)さまでございますな?」

この娘、心に決めた何かがある。煩苦はそう思った。

「娘さん、濃苦川(濃くて苦いんですね。)などと、将軍様のような姓がこの世にありましょうか?まして、珍豪などと、貴女様のような娘が口にする言葉ではない。フハハ...」

家に入ろうとする煩苦の右手を娘は握り、そして言ったのである。それは憶測ではなく断言といういものである。

「戦擦使徒(せんずりすと)とは、おなごがあざ笑う辛気くさい風体。この村に貴方様以上に辛気くさい住人がおりませんことは知っております」

この娘、戦擦使徒とはいかなるものか知っている。
また、歴戦の戦擦使徒であった煩苦は見逃さなかった。
化粧と着物をただすことにより上品に見えたが、長らくの旅であったことを。眼差しと、右手を握った手を見て理解した。
娘も見逃さなかった。この男の右手に柔らかな箇所と硬くなっている箇所があることを。それは匠の手であった。

「問答をしていてもらちがあかぬ。これから夕涼みをするところであった。我が家の井戸はよく冷えておる。縁側へまいろうて」

 二人は縁側に腰を下ろすと、煩苦は娘に水を、己は酒を、そして冷やしていたキュウリが浸された桶を用意した。

「昇る陽と沈む陽とは不思議なものであるな。どちらも毎日色が違うて」

煩苦は儀式のごとき仕草でおちょこを二回呷ると言ったのだった。
娘は煩苦に酒をついだ。

「無学でございますな。お天道さまは一つでございます」

やはりこの娘、良家の出に違いない。

「無学はおぬしじゃ。人とて笑いもすれば泣きもする。陽もそうであろう。うむ、よく冷えておる」

煩苦はキュウリの冷を愉しんだ。

「おぬしも一本どうじゃ。長旅で疲れておろう。キュウリは体の底を冷やしてくれるぞ」

「いえ、いりませぬ」

「それでは下の口からいかがですかな?」


「絶対、いりませぬ!」


これでよいと思った。無用な事に巻き込まれる前に娘に退散してもらわねばならない。

「山の寺より凍み豆腐をいただいた。山菜と煮付けてあるゆえ、じきに飯にしようかの」

娘は思いを切り言ったものだ。

「なぜ、東に濃苦川ありと呼ばれた珍豪がこのような無為の日々を?道場も持たず、弟子もとらず」

「おぬしもしつこいのお。よいか、戦擦使徒とは流派もなければ独りでするもの。誰でもできるものでなければならぬ。規律は己の中だけでよく、弟子などというものにも押しつけ金を搾取するようなことがあってはならぬ」

「決めましたぞ」

娘は巾着を煩苦の前に置いた。

「わずかではございますが、これでこの艶映画を使い、せんずりしてくださいませ」

煩苦はそっと巾着を娘の手に握らせたものである。

「引き受けぬわけではないぞ。おなごの旅は何かと金がかかる。大事にしなされ」

残りの酒を呷ると続けた。

「かようなことを頼みにここまで来たとは、事情があろうて」

娘は大粒の涙をこぼし始めたのであった。おなごの雫は身に染みるのは何故かと煩苦は思った。

「我が父はあるところの大商人でございました」

聞けば、対立する商人が藩と結託。菜種油を藩の独占し、結託した商人にのみ売ることを許したという。
また、娘の父は多くの街道、海路に販路を持っていたが理由もなく没収されたとも。
困窮したところに藩は要求してきた。煩苦に依頼せし艶映画で一発ほとばしらせてみれば販路を返してやるという条件であった。
candy.jpg

しかし、豊かな生活で長らくおなご相手の享楽を続けてきた父は、それに刺激を見いだせず今や吹けば飛ぶような小屋で細々と暮らしているのだと。
これに煩苦は憤慨したのである。

「せんずりを政の脅しに使うとは許せぬ。市井の者は妻に隠れ、旅人たちは宿で飛ばし合い(実話。)をすることが本来の姿」

 その夜、晩飯を終えた二人は山の寺へ向かったのである。
暑苦しい顔つきの和尚が出迎えた。

「和尚、二つ頼みがある。一つは秘蔵の映写機を貸していただきたい。一つはこの娘を泊めていただきたい。旅の途上、宿が無い」

和尚は快く応じたものだ。
煩苦は娘の耳元で言った。

「安心せい。ここの和尚は小坊主にしか興味があらぬ。明日の朝、わしのところへ来い」

娘を寺に泊めさせたのは、夜這いの衝動を煩苦が耐えられるか自信がなかったからである。
この男、真にせんずりの道を追求した珍豪か疑わしいところがあった。

 翌朝、娘が煩苦のもとを訪れると、一通の手紙と丸められた紙を持った煩苦が立っていた。

「これを持って藩主に渡すがよい」

受け取った娘は言った。

「うっ、栗の花のかほりが!」


手紙にはこう記されていた。


包茎
この濃苦川煩苦、貴殿らの条件を見事おかずにして早漏。
かくなる上は、菜種油の独占をただちに辞め、販路の返還、館も還すべし。
もし、反故にするならばお上より賜った戦擦使徒の姓・濃苦川の下、お上に報告する所存である。
性具


人を小馬鹿にした箇所が見受けられたが、煩苦は手紙の書き方を誤って覚えたのであった。
この男が恋文をしたためても相手にされず、せんずりの道に生きる原因の一つであったことは本人も知らなかったのである。

「やはり...。礼のしようがございません」

「礼なぞいらん。娘よ、さ、早く行くがいい」

心なしか娘の顔から疲労の色は消え、艶やかさが戻ったようであった。
見送る後ろ姿に煩苦は餞別としてせんずりしたものだ。

「これでいい。これでいいのじゃ。しかし、若いおなごの尻は良いのう。朝から二発とはわしもまだまだ原液じゃな

娘が見えなくなる寸前、娘は振り返り笑顔で頭を垂れた。おかずにされたことも知らず。
天下の珍豪から、再び無為の孤独な男へと顔を変えたのであった。
男の名は濃苦川煩苦。一騎当千の戦擦使徒。
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コメント

  1. ギ装置R | URL | NHJrzpKY

    うわこれ面白いよ!!

    歯磨きしながら読んだら吹くどころで済まず手元が狂って危なかった(笑)。

    菜種油ってモチーフだけ妙にマトモなのがまた…
    あと弟子を取らない理由がカッコイイ。

    煩苦って初登場キャラだったっけ?ファンになった!
    今後またシリーズが有るなら熟女もオカズにしてー…って言いたいけど、煩苦とハンク本人のキャラかぶり過ぎてるからやっぱそれは微妙。

  2. Eve | URL | -

    (笑)
    【キャンディ】本編には
    一切触れぬとは…(汗)
    でも
    面白かったデス

    “キャンディ”は
    当時の思想観念やらで観方が色々あるケド
    エヴァ・オーリンが可愛ってだけで全て丸く納まっちゃってる‥とゆう私も好きな作品。



  3. ハンク | URL | -

    Re: タイトルなし

    おはよございます。
    って、どんだけ早寝早起きやねん!

    > うわこれ面白いよ!!
    市井の人のふりしてる浪人とか侠客が「殺して欲しい奴の名前をここにお書き」っつーののせんずり版ですね。

    > 菜種油ってモチーフだけ妙にマトモなのがまた…
    水戸黄門にありがちですね(笑

    > 煩苦って初登場キャラだったっけ?ファンになった!
    「せんずりの達人」って設定で二回くらい書いた記憶が...。
    せんずりに対するこだわりとかは、まんま俺の持論なんですがね。

    > 今後またシリーズが有るなら熟女もオカズにしてー
    来年の大河ドラマにひっかけて、青年時代版も書きましょうか。
    「お市の方」でぐぐってみれ。

  4. ハンク | URL | -

    Re: *

    > 【キャンディ】本編には
    > 一切触れぬとは…(汗)
    あ、別途、感想の記事書きますよ。
    公式サイトが既に消滅してたりで、情報が少なくて知りたかった海外のサイトで調べたりしてたんで。
    (OPの曲がステッペン・ウルフなのか他のバンドなのか?とか。)
    OPは『地獄の黙示録』のOPとは趣きが違うアシッド・ムービーですね。
    他、個人的に「○○フェチ向け」と思ったとことかあり(笑)
    国内のレビューとはかなり異なった感想を抱きましたねぇ。

    あと、テリー・サザーンは『コレクター』(1965年の方。)にも関わってたんですね。
    昔、カルト作品ばっか置いてた店で借りて観ましたよ。イカレた作品だったなぁ。

  5. インディアン | URL | -

    頻繁に苦しむかと思ったら煩わしく苦しむだった…

    煩わしく苦しむって辛い気がするので飯食の方が可愛いと思います。冗談だけど。
    面白かったです!v-42
    深そうだけど冗談ぽくて笑えました。
    プラトニックだったり、何気にいい話に終わっていておかしかった。
    ハンクさんは文章かくの上手いですよね。

  6. ハンク | URL | -

    Re: 頻繁に苦しむかと思ったら煩わしく苦しむだった…

    煩苦=煩悩に苦しむ(笑)

    一応、お話はさっきアップした映画『キャンディ』とリンクしてる部分がいくつかある。
    でも、書いてる途中で急用が出来たんではしょってますが。

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