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スカム・フィクション2

2010年07月09日 18:22

 こんばんゎ。毎度お馴染み、虐げられた番組『横丁の匠』の時間です。

司会はワタクシ、ハンキー・ドリー・ハンク。

どこの誰が言ったか知りませんが、てか知りたかねーですね。

「土方を殺すにゃ刃物はいらねえ、雨が三日も降ればいい」

しかし、この格言が誰のものかはワタクシは知っております。



「赤ワイン一本とキーボードがあれば、三十分で短編小説は書ける」



また、彼はこうも言っておりました。



「何が文芸賞を狙う技法だ!文章が上手くなってたまるか!どいつもこいつもくそったれ!



そして、こうも。



「俺は本屋に売ってないようなものを書きたいんだ」



それでは、今夜のゲストをお呼びしましょう!

ハンキー・ドリー・ハンクさんです!

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ちょっとちょっと、ダイエット前の写真使わないでくださいよ!

てか、なんか、ダイエット前はやらしい乳首してますね、このしと。



(以下、七年前までの文体に一時戻ります。)

 てかな、「テキスト系サイトが終わった」と言われて五年以上経つけどな、俺ぁまだテキスト中心のコンテンツ・サイトでやるつもりだぞ。

酒ばっか飲んで、サイト作成が一向に進んでねえけどな。

このクソブログじゃ小説は書きたくねえと思ってたが、思い出の作品をお久しぶりに三度目の再掲載だよ、オマエさん。

今から七年以上前の作品で、ある友達のために居合い切りの達人を脳裏に描いて三十分ちょいで書いたサイテーでサイコーにイカレた小説。

お題は書いた当時のものと変えた。

これを二度目に旧Soul Kitchenにてアップした際、デロリにイラストも描いてもらい、それを元に文庫の表紙調に加工した。あと、友達もこっそり物語中に登場させてるんで、思い入れがある作品。

他にも色々書いたが、後にも先にもこの文体で書いたのはこれだけ。

これで「健全なサイト運営がどうたらこうたら」で閲覧禁止になったら、表現の自由について考察した長文を書かなきゃなんねえな、おい。





『人参じゃがいも野菜抜き』


Soul Kitchen(仮)




 昼過ぎにテレビをつけると、陳腐な精神科医もののドラマを放映していた。



「タタレイミチコさん。今日はいかがされましたか?」

「先生、多々礼満子と書いて、タダレマンコって読むんです」

「なんだって?」

「タダレマンコです」



沈黙。



「で、なんだったかな?」

「私、夜になると、部屋のタオルが人に見えたり、横になると、天井を黒い蜘蛛のような、でも蜘蛛じゃない虫が蠢いて、はい回って、交尾をしているのが見えるんです」

「ほう」

「そして、枕から声が聞こえるんです。殺してやる、死ね、って。でも、我慢できるから、まだ私は大丈夫ですよね?精神科に行かなくてもいいですよね?」

「ミチコさん」

「マンコです」

「私は精神科医だよ」

「え!嘘ばっかり、この前だって、日陰干しした服の匂いが茄子の皇帝の仕業だって気付いて来たじゃないですか」

「だから…」



ヨシヲは耳鳴りがしてきてテレビを消した。



 あれは小学校一年の頃だった。ヨシヲの故郷は漁師町で、漁期になると各家がボートより二回り大きい船を早朝海にだしていた。そして、日が高くなる頃戻ってきて、電動式の船揚げ機で船を岸壁の傾斜から引き上げる。

ヨシヲが船揚げ機の、ワイヤーが巻かれたドラムの上でCCBを歌っていると、遠くに友達が通りかかるのが見えた。ヨシヲは手を振った。「おーい」ついでに一回ジャンプした。

ヨシヲの足はドラムより二.五ミリ外に落ちた。ちょうどワイヤーが交差している箇所で、小学一年生の軽い体は容易く引っ張られ、叫び声を上げる頃には肉にワイヤーが食い込み、えぐれ、ドラムに巻き込まれていた。

ヨシヲの脚は四重に折れ、足の甲は肉がえぐれて骨が見えていた。周囲には、重油と磯と、そして非日常な、それも、焦げ付くような臭素が混合して、イカした匂いが充満した。救急車が到着するまで、ヨシヲは般若心経のようなものを唱えていた。泣きながら。



「ママァ、ママァ」



 ヨシヲの脚は壊死しかけ、一度の切断ではおさまらず、二度切断しなければならない可能性もあったが、奇跡的に回復した。切断した脚を火葬する日取りまで決まっていたが。ただ、何ヶ月もベッドに寝たきりだったため、背中には大きな床ずれができていた。それ以来その町では、<子供を絶対船揚場には近づけてはいけない>というきまりが出来た。ヨシヲは町の行政に一石を投じたわけだ。

脚に致命的なけがを負いながら、中学になると陸上部に入部。地方の記録を塗り替えていった。特に長距離が得意だった。ママは喜んだ。そして、卒業文集に将来の夢を綴った。



「長距離ドライバーになりたい」



ママは泣いた。「アンタ、長距離ランナーでしょ」と。それでミソがついて、ヨシヲは走ることを辞めた。

 ヨシヲは部屋に食べ物が何も無いことに気付くと、近所のカレー屋に行った。

「ポーク・カレー。人参じゃがいも野菜抜き」

「はいよ」

ヨシヲは単に野菜抜きと言えばいいものを、人参じゃがいも野菜抜きと言っていた。野菜が食えなかった。特に人参とじゃがいもが。他の野菜が抜かれていても、人参とじゃがいもは怨念のように混入していそうで、いつもそう言うことにしていた。

場末のラーメン屋のように、おばちゃんがカレーの中に指を突っ込みながら持ってきた。皿を置いたおばちゃんは、親指についた黄土色をしゃぶりながら厨房に戻っていった。黄土色は器から離れるとひどく汚らしいものに思えた。おばちゃんは総入れ歯で、入ればを外してしてもらうフェラチオは絶品だという噂だった。おばちゃんは黄土色を美味そうに舐めている。

肉をライスに寄せて一口入れると、肉とは違った感触だった。脳がエマージェンシーを発動するより0.三秒早く、ヨシヲは噛んだ。割った蛍光灯の粉を吸い込んだような、発熱した電池のような風味が口中に広がった。額に汗が滲み、吐き出すと、それはゴキブリだった。噛まれて首のあたりがえぐれていて、筋のようなもので辛うじて胴体と繋がっていた。胴体からは螺旋状の、肌色をした管のようなものが垂れていた。おばちゃんは、厨房からその光景を見て言った。

「あら、ごめんね。どこの店も入ってるのよ」



 目眩を覚え、ヨシヲは街を歩いた。ただ、ただ、歩いた。そうすると、少し先に人が集まりだしていた。何かがあったようだ。嬉々とした会話が聞こえてきた。

「バイクと車だってよ」

交通事故のようだった。ヨシヲは急に気分が高揚し、早足になって、人が最も集まっている場所へ向かった。

人だかりをかき分けると、転倒したバイクから放り出された男が仰向けにうめいていた。一見外傷はなかったが、陰になっていた右腕の、肘から下が無かった。電柱の陰にもげた腕が転がっていた。血の匂いが伝わってきた。懐かしい匂いだった。接触した車に目を移すと、車内でドライバーがハンドルに腕をかけ突っ伏していた。泣いているようだった。そして、そこへライフルを持った中年の男が走ってきて喚いた。

間髪入れず警察と救急車が到着した。中年の男は喚き続けている。

「はねられた!俺は車にはねられた!」

救急隊が切断された若者の止血を行う。警官は車の、運転席ドアの窓からドライバーに呼びかけている。すぐさまパトカーがもう二台到着した。警官が五人増え、増えた分がライフルを持った中年の男を囲んだ。

「またお前か」

「はねられたのは俺なんだよ!」

「わかったわかった」

「三回もはねられたんだよう!怪我がなかったのが何よりだけどよう!」

「いいからおとなしくしろ」

男はライフルを掴んで、三回ジャンプした。叫びながら。

「はっ!ねっ!らっ!れっ!た!俺ははねられたぁ!」

「後は署で聞く」

そう言って警官の一人が男の腕をとると、それをふりほどき、発砲した。警官の顔は、内側から押し出されるようにして、しかし、打ち付けたようにえぐれ、完熟したトマトを床に落としたように、真っ赤になって倒れた。

みんな逃げまどった。ちょうど、バイクの若者が救急車に収容された時で、救急車も勢いよく発進した。老婆が手を振り上げ喚いている。振り上げた先にあったのは、腕だった。

「忘れ物お!忘れ物だよぅ!腕え!腕え!」

救急車は止まらなかった。

一台の車が通りがかる。

「なんだありゃ」

車内から刑事が物々しい現場を見て言った。眉毛に刺青を入れた男は答えた。

「イベントじゃないっすか」

(了)



イラスト:デロリ


特別出演:TT
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